sanaritxt’s blog

思考をぽつぽつ置いておくところです。

短編 「午前三時半 BAR地下一階」 題「酒」

「あなたなしでは、いられない?…なんて。
古い歌だっけ。あったよね。確か。
ねえ、ね。聞いてる?
ジンライム美味しいよ。
香りと、熱さね。喉に滲みるのがいいよね。胸が焦げて身震いするよ。これ、何かに似てる。
うーん…。あ、酔ってて聞いてないでしょ。もう眠いの?いつもそうだよね。じゃあ言うから。むしろ寝てていいから。
ねえ。一緒に飲んでると、身体中のすべて、細胞も脳も眼球も内臓も足の指先も指輪もね、すべてあなたになっちゃうような、あなたと一つになった気がするんだよ。この感覚、わからないだろうけれどね。わからないだろうってことも、わかるんだよ。
だから言うよ。しっかり覚えてて。朝になって、街に紛れた後も、私はあなたのことが好きだよ。お酒と同じぐらいには、あなたのことが好きだよ。それはね。他のことはどうだっていいって思えるぐらいに愛しいってことだよ。

お酒と同じぐらいには、愛しいってことだよ。」

 

短編 題「酒」より