俳句と300字短編「給水塔の空」(オリジナル)
「Tw300字SS」さま(@Tw300ss)の短編ショートショート掲載企画に参加します。
先行して、ツイッター俳句企画 「せつない句会」さま(@setsunaikukai) へ投句した俳句があります。
その際の様子はこちら(ツイートへのリンクです)
https://twitter.com/setunaikukai/status/827532307183525889
春立ちぬ給水塔の空ひとつ / りんた
この句を作る素、のようなものを、今回の300字SSに記しました。
第二十九回、お題は「氷」でした。氷雨、氷河、氷菓など、様々な氷のある光景がテーマです。
お題ツイートの詳細はこちらです(同じくツイートへのリンクです)
https://twitter.com/tw300ss/status/827759043821268992
私の短編はここからです。
お読みいただけたら嬉しいです。
給水塔の空
「じゃあ、またね」
朽ちた給水タンクの中の、丸く切り抜かれた水面に、肩を寄せる二人の姿が映る。背後の青空が霞んで、ぼんやりと春が来ている。花と土の匂いが微かに漂い、蜂が通り過ぎた。鍵の壊れたタンクの蓋を閉めると二人はひとり一人になる。梯子を降りて別れた。数年、ここで一緒にいたのに、今夜からは田舎と都会に別れる。
その夜は急に冷え込んだ。二人の夢をみた。唇から白い息が漏れて朝になる。隠れて給水塔へ向かった。
冷たいタンクの肌に触れる。壊れた蓋を開けた。そこに二人の姿はない。水面すらもない。薄ら歪んだ氷が張って、いくつも亀裂が入って自分の姿すら形にならない。空がほの白い。
この空はいつも変わらずに一つだ。
@TxtSana
#Twitter300字ss
とても遅くなりましたが、本年もどうぞよろしくお願いいたします!
お試し 3章 「重い水密扉を目指して」 2/5 小説『2oH-2o39』
こんにちは。第三章の試読をアップします。
これまでお読み頂いているだけでも、すごく嬉しいです。
どうか、文フリの会場で購入していただけますように。
本書が、本書を読む人にとってよい読書時間や体験の一つになってくれたら、と願っています。
小説『2oH-2o39』
サンプル
第三章
重い水密扉を目指して 3/5 新秩序 2024~2033
続きを読むお試し 2章 迷いと祈りの間 3/5 サンプル タイトル『2oH-2o39』
みなさんこんにちは。文フリ東京まであと少し、ですね。
今までここに、試し読みを三章まで公開していたのですが、原稿を書き直しましたので、再度掲載します。
SFって、人の生き方と日常をちゃんと書くことが大事だと思っています。
日常の描写と心の動きをしっかりと書くことで、突拍子もない技術や社会の変化でも違和感なく読んでもらえるのではないか、と思っています。
小説タイトル『2oH-2o39』(つーおーえいち‐つーおーみっく)
第二章
迷いと祈りの間 3/5 サンプル 2017~ある二人暮らし
続きを読む文フリ東京 秋に参加します。スペースD−11 短編風長編SF小説『2oH-2o39』
こんばんは。お久しぶりです。
さて、11月23日(水)祝
東京流通センタービルで開催される文フリ東京(一次創作文藝同人誌即売会)に参加します。
場所は、モノレールに乗ってるとだいたい通過する流通センター駅を降りてすぐのところにあるビルです。
私のスペースは D-11 です。
1Fの真ん中なので、見つけやすいと思います。
私が不在にするのは、他の本を買いに行っている時と食事や休憩の時です。
それ以外は多分いますから、遊びに来てくれたらものすごく喜びます!
ずっと話しててくれてもいいぐらい、人が来ないと思いますので……。
できるだけ、ツイッターに動きを告知しますので、
アカウント、 @TxtSana をフォローしてみてください。
そこそこ幸せになれた気がしますよ、きっと。
取り置きなどございましたら、その旨ご連絡頂けますと、とても助かります。
頒布するのは、先日の大阪と同様、
短編集のように読める長編SF小説『2oH-2o39』(つーおーえいちはいふんつーおーみっく)です。
※追記 改良版行けそうです!
架空の2000年代初頭から始まり、架空の2030年代後半までを連作短編の形で収録した、全4章です。
最終章以外は、どれを先に読んでも大丈夫なように記してあります。
ちょっとした時間の合間に、読んで頂けたら嬉しいです。
あとで、SFって難しくないし、そもそも文藝に上も下もないです、ってことを書こうと思います。
これから次々と、サンプルと解説も掲載してしていきますので、どうか楽しみにしていてください!
一歌談欒vol.2 短歌読み企画 中澤系
目に見えるもの。耳に聞こえるもの。
外側から自分のなかに入ってくるものは、自分の内面と同化してしまう。
繰り返して過ぎてはまた来る日々に疲弊する。自分らしくあることはできないことすらも、自分らしく認識してしまう。
繰り返し、朝起きて、周囲と同化して、駅へ行く。
それぞれの、まあ似たような人の中に紛れる。周囲には、幸せそうなときの自分や、今の自分のような人もいて、同じように重なるのに、それぞれわかり合うことはできない。
そうして毎日、駅のホームには、自分のような、たくさんの他人で充ちている。箱詰めにされて、また戻ってくるために。
3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって
中澤系『中澤系歌集uta0001.txt』より
ホームにはいつものとおり、よく通る鼻声のアナウンスが流れて、自分の外側から流れ込んできて同化する。
ホームに立つ人々は、それぞれが無関心に俯いている。手元の端末を見ていたり、ただ下を向いて半眼でいる。どこかで知り合い同士なのか、喋っている人がいるぐらいで、足音や鼻をすする音以外には、衣摺れやバッグを持ち上げる音が響いている。
自分を含めて、みんなが勝手に、何を考えているのかわからない。何を考えているのかわからないようにしていることを共有して、他人に無関心になることが難しい距離で、ホームに並ぶ。誰の耳にも、同じアナウンスが入っている。
快速は、間も無く轟音とともに流れ込んで来る。もしもホームに転落したら、とても助からない。一瞬で、自分の存在を打ち消してしまうのだ。
もう考えなくて済む。繰り返さなくて済むことは、もしかすると、楽になることなのかも知れない。だけれどそれは、秩序と約束を崩し、そう考える主体も消滅させてしまう、してはいけない行動だ。
忙しくしていると、そんなことを考えなくても済む。だけれど電車を待つ時間は、繰り返される日々の中でも、特にスポットのようにぽっかりと人を閉じ込めて、考える時間とあやふやなストレスを生む。
そうして、消えてしまいたくなる。
快速が通過するアナウンスを合図に、すこし、ゆらりと上体が傾いて戻る。
局面を描くホームを横目に、幾人かが同じように、迷っているように見えた。
まるで、そんなことがないように、楽しそうに話しながら数人が、ホームを歩いて来る。
アナウンスに何を思うこともなく、線からはみ出して。
あぶないよ。
理解できない人は下がって。