300字短編「呼び名」(オリジナル)
お題に沿って300字のショートショートを記す企画に参加します。
今回のテーマは「散る・散らされる」です。
どうぞよろしくお願いいたします。
今夜21時開催です。第三十一回のお題は「散る」です。桜、水、光、様々なものが「散る・散らされる」光景を作品にして下さい。詳しい概要→ https://t.co/GtCHTLOpLL に沿って21時~24時に #Twitter300字ss のタグをつけて投稿して下さい
— Tw300字ss (@Tw300ss) 2017年4月1日
呼び名
休日二度寝、午前九時、息子の拙い声と共に揺さぶられて起きた。
「お花見に行きたい」
と何度も言うので、連れて出る。
外へ出るとき、この子は最初だけ大人しい。
今のうちに、と急いでコンビニに寄っておにぎりを買って、お花見の時期を過ぎて人のいない公園に入った。
黄色い滑り台と、もう誰も見向きもしない葉桜と水色のベンチがある。
一緒に座って、薄く白いビニール袋からフィルムに包まれたおにぎりを出して、
「中身なにが入ってると思う?」
と聞きながら開けた。
風が吹いて、わずかに残った花びらが散って、ひとひらが海苔に付いて、
「さくら。」
そう言われて、面白いな、と笑っておにぎりを渡した。
ツナマヨは、今日からさくらと呼んでいく。