読み物
ふたたび生命となるために お婆ちゃんは、井戸と東屋のある木造の平屋に住んでいる。一見雑草だらけの庭。毎日手入れに熱心だ。花の苗が植えられていて、季節ごと庭のあちこちで、色とりどりの蕾が膨らむ。生命に満ち、美しい。 この庭で、花が咲くことは決…
人にあまり興味がないせいか、自分も人から覚えられたり認識されると思っていない。相手のこともろくに覚えていないし、相手もこちらをすぐに忘れる。最初からこうではなかった。軽薄に誰かを強く強く信じたし、予想外に裏切ってしまったこともある。自分が…
集まった子供達を大人があやす。 満月の描かれた絵本を開いて掲げ、それを正面から右の子供へ、左の子どもへ、ちゃんと見えるようにゆっくりと振りながら噛んで聞かせるように言う。 「お月様には、うさぎさんがいるんです!」 「わー」 いるんだ!その子供…